――この道は、それに続いている。
そう思ったのはなんとなくで、それを確実とした明らかな証拠などなかったが、
土方にはわかっていた。
桂に会う数時間前、あの男の懐に抱かれていた自分を思い、そして数分前に別の男に誘われた自分を思った。
なんとも都合の良い話じゃねェか。
まさか、この俺が行くとでも?
んなわけ、――あるわけがない。
この俺でも、そんなに暇じゃあない。
土方は自分の歩く暗い路地を音を無くして進む。
けれどその心には、葛藤が続いた。
珍しいことだった。
以前ならばかき乱されていたこの胸が、なんとも物応じせぬことを。
憤りや不安、焦燥の蟠り。
それらすべて色情に変え毎晩の様にあの男にぶつけた。
その所為なのかはわからないが、思えば以前のそれは消えていることを知った。
相手が誰であろうとあの頃は、その胸の鉛が取れさえすればよいと思っていた。
あたりかまわずというわけではなかったが、あの頃に出会った相手があの男、高杉だった。
『堕ちて行く』
ということに抵抗はもちろんあった。が、あの甘美を知ってしまった躯はもう、言うことなんて聞くはずがない。
あの有能なる甘美は、きっと堕ちた者しかわからないだろう。
堕ちる、なんて言葉を聞く事や口にした時は、ただただ感嘆してしまうほどだ。
・・・ああ、もっとシテほしい。
と自分の其れが疼く。
褒める方と嘆く方。
どっちをとってもいい。けれど俺は、嘆く方だ。
まどろみの中に陶酔していく様を、遠目にただ何も出来ぬ赤子のように嘆き悲しむのだ。
そして熱く疼くのはいつだって俺の方だ。
あの男の下でアレを咥えて舐めあげて甘美を味わう。
深い夜、誰にも邪魔されず・・明かりは乏しい蝋燭だけ。
どんなに彼処を溢れさせようがどんなにしゃぶってもどんなに水音をかき混ぜようが誰に構う事もない。
その刹那に繰り広げられる躯を今宵はどうして慰撫するか。
口では何を言おうが・・・、本能は知っている。ただ、それに従って行為をするだけだ。
今でも感嘆する。自惚れてしまう。あの宵に溶ける。
今しがた出てきたばかりだというのに、それでも躯は言うことを効かない。
薬として与えられる、まるで麻薬のような瞬間(とき)はいつだって刹那に過ぎて行く。
でもただその刹那が愛おしくて堪らない、、、。
だからただ赤子同然のようにしかならないのだ。
欲しくてもどんなに与えられたところで泣き止まない。
その欲を知ってしまったその時から――堕ちて行く、というのは。
足は素直に自分の還る道へと流れる。
頭では、胸中では解っている。知っている。この道がどこへ続いているかを。
昼になれば夜とは別人の様に仮面をつけて勤しむ。
それが真選組鬼の副長の生活だ。
別に誰も騙しているわけではない。バレてもいないのだから騙すこともない。
だが・・・・、あの男は・・・。
以前、土方は桂小太郎に会っていた。
真選組と攘夷志士の関係ではなく、互いが己の生活の中の一部にて。
面と向かい合わせになった時今のような反応ではなかったことは未だ記憶に鮮明だ。
桂も依然として特に変わった様子も無くそれでいてやっぱり女の様に華奢だった。
土方はその躯に這うように目を流して、それは少しだけ欲情した。
何も言わず、すぐに翻して去るその腕を掴み、壁へと押しやる。
やめろ!と押し返す力で開いた股に足を割り込ませ、吐かれた罵声と力を土方の口で奪った。
・・・き、っ・・・さま!
桂の声は途切れていた。
まさか男に口を奪われるなんて、思ってもいないという顔だ。
確かにそれはそうだろう。
余裕の笑みで返すと、桂の顔は少し赤みがかかっていた。
「ほう、満更でもないってか」
そう返した土方の言葉にすぐさま反発したが、力は男のものではなかった。
身動きできないようにしてやったのだから半分以上もその男の力は発揮されてない。
そして更に尚もその牙すら折った。
ん、んぐっ・・・・!
「あ、・・・ぅぐ・・・っんん」
小さな吐息と水音が漏れる。
それでも土方はそのまま奥へと舌を掻き入れ口内を犯す。
舌を絡めとり歯列をなぞって更に相手との舌を重ねるように桂が感じられるように・・・
しばらくそうやって続けると、強く押し返していた力は徐々に弱まり土方に身を任せるようにまでなった。
股の間にある足の重みは支えられてようやく、という証拠だった。
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